――だから、手紙を書いた。


本を読むのがすきならば手紙の一通くらい目を通してくれる、と期待を込めて。


(受け取ってくれますように!!)


彼が図書館を出たタイミングで。


「あ、あのっ……」


追いかけて、声をかけた。


振り返った彼は目を見開いた。

そりゃあビックリするよね。

同じ図書館を利用する以外に、わたし達に共通点はないんだから。


「……えっと、」


たった一通の手紙を渡すのにこんなに勇気がいるなんて思いもしなかった。

納得がいくまで何度も書き直したじゃないか。

便箋が足りなくなって、新しいものを買いに行ったくらいには。


最初に用意したものの色味のほうが気に入っていたけれど、封筒と便箋はセットのものを使いたかったから、少しだけ妥協した。


とはいえ、大好きなドット柄には違いない。