過剰な期待されても応えられないです。……今は。



そういえば中学の頃、わたしは傘をよくなくす子だった。

いや、正確には、盗られていたんだけれど。


だからこの時期は折り畳み傘を鞄にひとつ入れていることが多かった。


それでも大きなしっかりした傘の方が気に入っていたから、大きな傘を持ち歩くのをやめたりはしなかった。


そんなとき、出逢ったのが――。


「……園原くん?」

「お久しぶりです。八重樫さん」


校門前にいたのは、紛れもなく、園原くんだった。


「どうしたんですか? なんで……ここに」

「いきなり訪ねてきてすみません。迷惑だとは思ったんですけど」

「め、迷惑じゃないです!」

申し訳なさそうな様子の園原くんをみて、つい大きな声を出してしまった。

そのとき。傍を横山と女子が通った。


「カラオケ行こー!」

「んー、カラオケなぁ……」


横山と目が合う。


ニッコリ微笑まれ、すぐにそらされたけれど

また横山から『頑張って』と言ってもらえた気がした。


「よっしゃ。行くか!」

「やったー!」

「俺、いま叫びたい気分」

「なにそれー。どんな気分?」


にぎやかな横山たちが通りすぎたあとは、雨音だけがあたりに響いている。


「返事を書きました」

「……え?」

「こういうの、慣れてなくて。……時間かかっちゃったんです。遅くなってすみません」


そう言って手渡されたのは、封筒だった。


「え……ほんとに!?」

「受け取ってくれますか」

「もちろん! すごく嬉しい……です」