会議が終わって少し休んでから、

残りの大量のハガキを片付けようとしていた時だった。




ふと俺の目に1枚のハガキが留まった。


〔拝啓 恋を教えてください。〕


濃さはHくらいのシャープペンか鉛筆でこう書いてあった。


綺麗な、整った字。
流れるような字だ。
和菓子のパッケージにありそうな、筆記体みたいに繋がったような字。


その綺麗さというか儚さに目を奪われた。なぜだ。


この人は恋をしたことが、ないのだろうか?


字からすると、高校生以上ではありそうだが。


ひとり疑問を抱いていると、
さらに薄い字でハガキの左端にも文字が書いてあることに気づいた。


〔心の居場所が、ほしい。〕


心の、居場所。


この差出人は孤独な人なのだろうか?

それなら、叶えてやりたい気がするが。


・・・でも、叶い人はもう一応、決まった。
叶い人は、1年につき1人だけ。



これを今から提案しても無駄だし、
恋<<<いじめ
だろう。誰の目から見ても。



そっとハガキを裏返し、差出人を見た。


そこには聞いたこともない住所と、
ただ、〔ハルカ〕と書かれていた。


ハルカさん、てことは女性なのか。


いや、わからないけれど。


でも胸騒ぎがした。

どうしてかはわからない。

この人に会ってみたいということなのか、
この願いを叶えてあげたいということなのか、
この人のことを知りたいということなのか、
俺がどうして胸騒ぎがするのかはわからない。



でもこのまま見過ごすのはとても惜しい気がして、
またすぐ見つけられるように
ハガキの山の1番上にハルカさんからのハガキを置いて、そっとハガキ入れの引き出しを閉めた。