グラスに添えた、あたしの手をつかみ。

へえ。そいつ、
この手に、触れるんだ?

…やめて。


あたしの頬に、手を当てて
唇を親指でなぞる。

…ここにも、触れるわけ?


胸が高鳴る。

…なんなの?
酔ってるの…?


こんな洋平、見たことなかった。
怖いくらいの目で、あたしを刺す。


あたしの目に、恐怖を感じ取ったのか…

ハッと我にかえるように、目をぎゅっと
つぶって、
悪かった…。と、うつむいた。


あたし、帰る。

立ち上がろうとしたのに、
あたしの手を離そうとしない。

アキ、話したいことがある。
場所変えて、もう少し付き合って。

酔っているわけじゃないのは、
顔を見ればわかる。


でも、なんで今更…。


ふぅ…わかった。
じゃあ、あたしの話が先。

あの日知りたかった…
あたしをふった訳を、聞かせてもらう。


…よし。取引成立。
行こう。と、席を立つ背中に、
わけもわからないまま、ついて行った。