雨、降りそうだなぁ



昼休みのあとの授業


先生が読む子守唄のような英文


ノートに文字が書けなくなってしまうくらい


ウトウトする時間


欠伸を噛み殺して


窓の外を見ると


雨雲が立ち込んでいた。






あ、傘忘れてきた。


帰る頃に雨降らないといいな。









そんな私の願いは


届かず



『凄い、雨だねぇ』


『傘持ってきて良かった〜』


『私も折傘、なぜか鞄に入ってた!』




幼馴染の


未羽こと日比谷未羽と


秋くんこと田宮秋斗は



傘を持ってきているらしく


この憂鬱な雨が降っている事実を知っても


ニコニコ笑っている。




『夕姫は?』



傘ある?

と上目遣いで聞いてくる未羽



『無いよ、どうしよう。』



2人のどちらかに


入れてもらうにしても


2人とは家の方向が反対だったため


無理だった。



仕方ない。

濡れて帰ろうか。



『じゃあさ、未羽と僕で相傘して帰るから

未羽の折傘借りたらいいんじゃない?』




秋くんが有難い提案をしてくれたおかげで

私は濡れずに帰れそうだった。



『うん、そうしようかな。』




未羽も快く高そうな折傘を貸してくれた。







そうして2人と昇降口に向かう



無意識にルーティンになっている


スマホの確認をしようと


普段入れている


ポケットに手を突っ込む。




だけど、さっき秋くんから貰った


はちみつキンカン味の


のど飴が入っているだけだった。






スマホ、無い……。



机かな。


一応鞄もチェックしたけど


そこにはなかった。



やっぱりスマホがないと多少不安になるみたい。


スマホには自分の全てが

入っていると言っても

過言ではないと思う。



第2の自分というか


もしかしたら、自分よりも


自分を分かっているものかもしれない。