高桐先生はビターが嫌い。


そう思ったら、何だかいてもたってもいられなくなって。

思わず教室を出て、空き教室の前でうろうろする。

けど、出入り口はドアが閉まっていて。廊下からじゃ、中の様子は一切見えない。

そのうちに、他のクラスメイトは皆、帰ったり部活に行ったりして…

そうこうしているうちに、やがてまだ残っているのは、あたし一人だけになった。



「…何やってんだろ」



そしてとうとう独りになってしまった教室に戻って、そう呟くと、意外に声が響いて少し驚く。

…教室って、意外とこんなに声が響くんだ。

いや、そうじゃなくて。

教室で。意味もなく、高桐先生が出てくるのを待ってみた。

いや、こんなことをしていても、市川だって戻ってくるわけだし…そう考えたら出くわしたくはないんだけど。

でも、気になるし…で、何もすることがないから、今日宿題を出された英語の問題集でも片付けてみる。

けど何気に英語…苦手なんだよなぁ。


そう思っていたら、ふいにその時…教室の入り口で、聞き覚えのある声がした。



「あれっ?奈央ちゃん何やってんの、」

「!」



いきなりのその声に、少しびっくりして顔を上げる。

すると、教室の入り口に立っていたのは後藤先生で。

後藤先生は、何を運んでいる最中なのか…段ボール箱を抱えたまま、あたしを見て言った。



「なに、勉強?偉いじゃん!」

「や、ちょっと待ってる人が…居て」

「え、待ってる人?」



…けどそう言った直後に、しまった、と思わず後藤先生から目を逸らす。

元々独りぼっちのあたしが、こうやって誰かを待つなんてこと…そもそもないのに。

しかもあたしがそう思っていると、やっぱり何かに気が付いた後藤先生が、その辺の机の上にその段ボール箱を置いて、言った。



「誰のこと待ってんの?あやしー」

「べ、別に誰だっていいじゃないですか!ってか先生仕事して下さいよ、」

「えー。俺いまヒマなんだよねー。帰るまでまだ2時間はあるし」