高桐先生はビターが嫌い。


「え、高桐先生から手繋いで来たの!?積極的!」

「あ、いや、そうじゃなくて…!」

「高桐先生って、やっぱイケメンだよね~」

「…、」



その子はそう言うと、やがてふいに我に返って、「あ、いきなりごめんね」とあたしに謝る。

…いや、何気に久しぶりにクラスメイトと純粋な話ができて、嬉しいっちゃ嬉しいんだけどさ。

なんか今…少し、ほんの少し…複雑な感じが、した気がして。

……何でだろ。

そう思いながら、独り、考えていると…



「市川ー」

「!」



その時、ふいに教室の隅から、市川を呼びとめる女子の声がした。

その声に耳を傾けると、市川の仲間の女子が、市川に言う。



「あんた高桐に呼ばれてんじゃん」

「…そうだけど」

「もちろん行かないでしょ?帰りにコスメ見て行こ!」

「…、」



しかし、仲間がそう言うと…市川がその瞬間、意外な言葉を口にした。



「…いや、行く」

「じゃあ早く帰、」

「じゃなくて。高桐のとこ、寄ってから帰る」

「!…え」



そう言って、鞄を机の上に置いたまま。

スタスタと教室を出て行く市川。

え…意外。

あたしは市川の姿を遠くから見ながら、思わずそう思った。

そっか…じゃあ、高桐先生は、これから市川と何の話…するんだろ。



『何かあったら遠慮しないで言ってよ。すぐ助ける』

『俺、ちゃんと力になるから』

『口だけで終わらしたりしない、から』



もしかして…あたしに言ったことと、同じようなことを…言うのかな。

市川も、あたしとおんなじだから。

もし、そうだったら…何か、嫌だな…。