高桐先生はビターが嫌い。


「…うん。じゃあ…教室戻ろっか」

「え、」



ふいに高桐先生が、そう言ってあたしに目を遣った。

でも、もちろんあたしは、納得がいかないし今日はもう戻りたくない。

何?何で?あの教室に戻れって言うの!?

しかしあたしが、首を横に振ると…



「逃げてちゃ変わんないよ」

「!」

「そうやって逃げていても、ただこの状況が悪い方向にエスカレートするだけ。だったら今は、教室に戻ろうよ。…俺がついてるから」




そう言って、躊躇いもなくあたしの手を取る高桐先生。

しかも、切り裂かれた制服も、高桐先生が片手で全て持ってくれて…。

あたしの心とは正反対に高桐先生が教室に戻って行くから、あたしはその後ろで不安が大きくなっていく。



「せ、先生…やっぱさっきの階段にもど、」

「だーめ。言ったでしょ?俺が力になるって。日向さんが独りじゃないの、俺が証明するから」

「!」



そう言うと、高桐先生は、ようやく到着した教室のドアを、ガラ、と開ける。

すると、その中では、自由に立ち歩いていた生徒皆が、高桐先生の登場に慌てて自分の席に戻って行って…。

あたしも自分の席に戻ろうとするけど、高桐先生が繋いでいる手を何故か離してくれなくて…

…先生…?もしかして…。

そう思って、これから起こることを予想してまた不安になっていたら、高桐先生が、次の瞬間みんなの前に切り裂かれたあたしの制服を見せて、言った。



「みんな。ちょっと今から数学と関係ない話するけど」

「…、」

「これ。日向さんの制服、こんなことしたの誰?」



先生がそう言うと。

その切り裂かれた制服を見て、驚いたような顔をする他の生徒達。

…高桐先生はきっと、市川に自分から名乗り出てほしいんだろう。

あたしが物凄くドキドキしながら黙っていたら、他の生徒達は皆自然と市川の方に目を遣って…



「…あ、何。市川さんが犯人なんだ?」



そんな生徒達の様子に気が付いた先生は、市川を見てそう言った。