高桐先生はビターが嫌い。


「っ…日向さん!」

「!」



ふいに、下の方から名前を呼ばれて。

慌てて涙を拭いて、顔を上げれば。

階段の下には何故か…息をきらしてあたしを見上げている、高桐先生の姿があって。



「!!…せ、先生!…なんでっ…」



思いもしなかった高桐先生の登場にあたしがそう言えば、高桐先生が言った。



「~っ…良かった、見つけられた…」

「…?」

「何か、ただならぬ雰囲気で教室を飛び出してったから、これは何かあるなって。
でも、クラスの皆に聞いても誰も答えてくれないし。
で、ほら、こういう時って、だいたい居場所は屋上か、そこに繋がる階段って誰でも決まってるじゃん?」



高桐先生はそう言いながら、あたしが座っているところまで、階段を上ってくる。

そんな高桐先生の言葉と姿に、あたしは内心は嬉しくて。

けど、素直になれなくて、高桐先生に言う。



「…バカじゃないんですか」

「え、」

「先生髪ボサボサ」

「そ、それはほらっ…走って来たから!」

「授業どうするつもり、」

「それはっ……急に飛び出してった生徒の方が先って、思ったから」

「!」



高桐先生はそう言うと、あたしの隣に腰を下ろす。

そして、「来ない方が良かった?」って聞くから、あたしは思わずそれを否定した。



「!!…っ、そ、そんなことはっ…!」

「!」



…けど、そう反応してやっと我に返る。

いつの間にか素直になってしまった。

高桐先生がそんなこと言うから。

でも高桐先生はあたしが否定したのを見ると、安心したように言う。



「…そっか。良かった」

「…っ…」