高桐先生はビターが嫌い。


そんなあたしの姿に気が付いて、すかさず高桐先生が廊下であたしを呼ぶ。

けど、振り向けないし立ち止まれない。

走っちゃいけない廊下を走りながら、途中で他の先生にも呼び止められて。

それでも、目的がどこなのか…自分でも、どこに向かっているのかわからないまま。

あたしは独り、制服を抱えて、とにかく走った。


…………



そこから全力疾走でやって来たのは、学校の屋上に繋がる誰もいない階段だった。

息を切らしながらそこに座ると、あたしは自分の制服に顔を埋める。

…どうしよう。授業サボるとか初めてだよ…。

そう思いながら、だけどまだ涙は止まらなくて。

あたしの頬や制服を、濡らしていく。


市川に、許してほしいとは言わない。

やるんなら気が済むまでやればいい。

ただ後で…大事なことに気が付いてくれるんなら。


だけど……このままじゃ、やっぱり嫌だ。

泣くってことは、結局あたしは、市川に許してほしいのかな…。



「…どうしよ、制服」



独り、そう考えながら涙声で情けなくそう呟いて、周りに誰もいないのをいいことにわんわん泣く。

もしかしたら、涙の原因は、この制服のせいだけじゃないのかもしれない。

考え出したらキリがなくて、それでも寂しくなって、もう止まらなくなる。

このままじゃ死にそう。

寂しすぎて、死んじゃいそう…。



『お前は独りでも大丈夫だろ』

『俺がいなくても、アイリちゃんは大丈夫そうだしね』

『寂しいなんて、嘘なんだ?』


「…~っ、」



…今まで、そうやって好き勝手言ってきた父親や元カレ達の言葉が、ふいに脳裏を過る。

その言葉を思い出す度、あたしはもう本当にこれから先もずっと独りのまま生きていくんじゃないかって。

周りの人がみんな…みんなに嫌われているような気がして、怖くなる。


…しかし、またそんなことを考えてしまっていた、その時…