高桐先生はビターが嫌い。


「…鞄の中」

「…え?」

「鞄の中に隠したんでしょ。日向の制服」



そう言って、仲間に目を遣ったまま。

早く出しなさいよ、と促す。

…今回は、市川のせいじゃなかった…ってこと?

あたしがそう思っていたら、そう言われた市川の仲間は、渋々自身の鞄から…あたしの制服を、取り出した。



「…!?」



…けど、取り出したはいいものの。

その制服は、見るからに切り裂かれていて。

もう着れない状態になっていることが、遠目からでもよくわかる。

そんなまさかの状態にあたしが目を丸くすると、仲間からその制服を奪い取った市川が、それをあたしに投げつけて言った。



「ほら、返すよ」

「!!…っ」

「残念だったねー?着れない状態になっちゃってて。…あ、それとも、頑張ってそのまま着ちゃう?」



そう言って、仲間たちと一緒に不気味に笑う。

近くでよく見てみれば、制服のカッターシャツや、スカート、ブレザーまでもが大胆に切り裂かれていて…。

あたしはその瞬間、大きなショックに襲われて、ただただその場に立ち尽くす。

しかも、その間に…数学の授業が始まってしまう、チャイムも鳴って…。

教室のなかが、何とも言えないいたたまれない雰囲気になって、あたしは思わず目の前の市川を初めて睨み付けた。



「…!」



…けど、睨み付けたはいいものの、その目からはいつの間にか涙がぼろぼろとこぼれ落ちていって。



「はい、席についてー」



高桐先生が、教室に入ってきたその瞬間…



「…っ、」



あたしは、何も言わずに制服を抱えたまま、走って教室を後にした。



「え、あれっ…日向さん!?」