高桐先生はビターが嫌い。


後藤先生はそう言うと、あたしに向かって優しい笑みを浮かべる。


…なんでこんなに、バレてしまうんだろう。

後藤先生を前にして、思わずそう思う。

今はもうこれ以上何を言っても無駄なような気がして。

隠し通せない。

だからあたしは、観念したように…言った。



「……わかりました。保健室には行きません」

「そ?じゃあ良かった」

「けど、バレーもバスケも…したくありません」

「!」



…だってどうせ、しようと思ったところで、そもそもあたしのことなんて仲間に入れてくれるはずがないんだし。

しかし、あたしがそう言ってると…



「せーんせー!」

「…?どしたー?」

「先生も、バスケやろーよー!」



ふいに後藤先生の後ろから、女子達がそう声をかけてきた。

…市川と仲良しの女子グループ。

きっと、完全にあたしのことを独りぼっちにさせたいんだろう。

後藤先生はそれに気が付くと、その子達の前にあたしを持ってきて、言う。



「…っ!?」

「おー、いいねー。じゃあコイツに審判させてやって」

「!!」

「いいでしょ?悪いけど俺、相手が女子生徒だからって遠慮とかしないよ」



じゃ、それで決まり!と。

女子達の返事も聞かないまま、淡々と決めていく後藤先生。

…まさかの審判。まぁ、下手にプレーさせられるよりはまだマシだけど。

…怖くて市川のことが見れない。

そう思っていたら、ふいに後藤先生にタイマーを渡され、先生を含むバスケの試合が始まった…。