高桐先生はビターが嫌い。


あたしは、そんなまさかの後藤先生の言葉を聞くと、思わずビックリして目を見開く。

そして、「どう?当たってる?」とあたしに目を向ける後藤先生に、あたしも目を遣って。



「な、なんっ…何で!?」

「おー、その反応は当たりか。さすが俺」

「じゃなくて、何でそんなことがわかるんですか!?」



と、驚きながらそう言った。

だって、それは内緒にしておきたかったことだったから。

まぁさすがに、黒幕の正体までは今はまだわかっていないみたいだけど。

でもこの後藤先生の様子じゃあ、黒幕の正体がわかってしまうのも、時間の問題だろうな…。

あたしがそう思って不安でいると、後藤先生が言う。



「…その頬のガーゼ。この前さ、転んだとかヤケドとか言ってたけど、そんなのどっちも嘘だってことくらい、すぐわかるじゃん」

「!」

「そのガーゼの存在理由として一番自然で、一番あり得るのは“殴られた”時だろ?そう考えたら、あとはもう犯人探し」

「…っ」

「まず、独り暮らしの奈央ちゃんが家族に殴られた…ってのは無いと思ってさ。
そしたら、彼氏?って考えたけど、奈央ちゃんは彼氏いないって言ってたし。
で、あと考えられるのは……」



そこまで言うと、後藤先生は。

動揺を隠せないあたしを、ちらりと横目で見遣る。

そんな後藤先生に、あたしは言葉を続けるように言った。



「…あたしが、イジメられてる可能性を考えたってこと…ですか?」

「そうそう。っつか、逆にそうとしか考えられなくて」