高桐先生はビターが嫌い。


「あれ、どうした奈央ちゃん」

「!?」

「奈央ちゃんもバレーかバスケ、やりなよ。たのしーよ?」



その時、それを遮るように、背後から後藤先生にそうやって呼び止められた。

…気づかれた!

後藤先生の言葉にあたしはそう思うと、体調が悪いから保健室に行くことを伝えようと口を開く。

しかし…



「…あっ、もしかして…!」

「!」

「奈央ちゃんて、友達いない?ぼっちか!」

「!!」



後藤先生は遠慮なくそう言うと、「ああ、なるほどなぁ」と独り納得する。

いや、あたしまだ頷いてないけど。…まぁ、実際ぼっち…なわけだけど。

それでも、「違います!」と言おうとすると、後藤先生が言葉を続ける。



「まぁまぁまぁまぁ…恥ずかしがんなくて平気だよ。ほら、世の中ぼっちの奴らなんていっぱいいるわけだし」

「いや、あたしはそういうわけじゃっ…!」

「ない?けど俺にはそう見えるなぁ。何よりその頬のガーゼが、そう証明してるからね」

「!」



そう言うと、ぷに、と。

人差し指で、軽くガーゼの上からついてくる後藤先生。

もう治りかけだから痛くはないけど……やっぱり後藤先生の目は誤魔化せないな。

そう思ってあたしが後藤先生の目を見れずにいると、後藤先生が畳み掛けるように言った。



「…奈央ちゃんさ、クラスでイジメられてんじゃない?」

「!」

「んー…この様子だと、さっきから奈央ちゃんのこと見て不満そうに何か話してる…あのコ達からかな?たぶん」

「!?」



後藤先生ははっきりそう言うと、その瞬間。

他の先生達も見破ることが出来なかった、嫌がらせの犯人…市川達のグループに、目を遣った。