高桐先生はビターが嫌い。


そう思いながら、職員室の前で息を吐いて、教室に戻るためその場を離れる。

…だから、嫌だったんだ。

高桐先生とは、合コンで出会っただけの仲…が良かったのに。

それなのに、隣に引っ越してきて、あたしの学校の教師にもなるなんて。それってお互いにビックリだし。

出来れば、これ以上は近づかないでいてほしい。



『俺、ちゃんと力になるから』



……本当に信じていいのか、こわいから。

ヘタに近づいたら、また、傷ついてしまいそうで。

だから………今は、何もない。フリをしていたい。


******


そして、それから数日後。

今日もまた変わらずにいろんな嫌がらせを受けていた、ある日。

午後の授業の体育には、後藤先生が来た。



「よしっ、はじめるぞー」

「!」



後藤先生は、女子が集まっている体育館に入ると、みんなにそう声をかける。

実は、あたしのクラスの体育は、女子は女の先生が担当していて。

後藤先生の担当教科は、地理や日本史。

だけど代わりに来た後藤先生曰く、今日はその女の先生が出張でいないらしく、この時間は自由時間になった。



「やったー!」

「え、センセー何しててもいいの!?」

「おー。けど、遊ぶのはナシな。ちゃんと体育らしいことしろよー」



…そんな後藤先生の言葉に、皆は友達同士で固まって、バスケットボールやバレーボール等を自由に出していく。

やっぱり…そうだよね。そうなっちゃうよね。

二つともそれなりの人数がいなきゃ出来ないスポーツだけど…この状況になるとあたしは呼ばれることはないから。

…しかも今日きてるのは後藤先生だし。

そう思いながらも、あたしは体育館の隅でその様子を静かに眺める。

仲間に…なんて、いつも入れてもらえないんだよね。だから、言うだけ無駄っていうか。

そう思いながら、そーっと、体育館を出ようとしたら。