そう言って、優しい笑顔を向けてくれる高桐先生。
……職員室でそれを言う?
あたしは内心、そう思いながらも…だけどその言葉に頷いたら、いま自分が市川達にされている嫌がらせを高桐先生の前で認めることになっちゃいそうで。
それだけは嫌だから、あたしはまた嘘を吐いた。
「っ……大丈夫です」
「…え?」
「確かに毎日寂しい…思いはしてますけど、あたし、高桐先生が思ってるよりは強いですから」
「!」
「この頬の傷も、あたしにとっては全然平気です。だから本当に、心配しないで下さい」
あたしはそう言うと、まだ心配そうな表情が消えない高桐先生の目を見る。
そしてそれと同時に脳裏にふと過るのは、過去の市川の涙。
あの時の市川を思い出す度…あたしは人には絶対に言えなくなるから。
『寂しいよ…ほんとは、すっごく』
『お願いだから、毎日誰か傍にいて、普通の愛が欲しいっ…』
『あんただってそれがわかるでしょ…っ!?』
「…っ、」
…わかるよ。
あたしもその寂しさが、痛いほどわかるから。
だから、何かを言いたげな高桐先生に半ば無理矢理に背中を向けると、あたしはそのまま高桐先生から離れて職員室を後にした。
「…失礼します」
「あっ…日向さんっ…!」
……我慢するんだ、今は。何があっても。
甘えてちゃいけない。

