高桐先生はビターが嫌い。


そこまで話して、思わず高桐先生の顔色を窺う。

…引かれたり…してない、よね?

それを確認すると、また続きを話し出す。



「…でも。あたしがまだ中学生だったある時、声をかけられて。…まぁ、単なるナンパ…だったんですけど。
だけどその頃のあたしは、ナンパのこととか本当に無知で。ついて行っちゃったんです」

「え、それって危ないじゃん!」

「ですよね。けど、ナンパしてきたその人も、実際は悪い人じゃなくて、ナンパも初めてだったらしいんです。…そうやって、あたしは初めて…人と接することを…知って」

「…、」

「そこからなんです。実はあたし、その時からいろんな男の人と遊んでました。
で、最初はあたしも“奈央”って本名をそのまま伝えてて、年齢も偽ったりしなかったんですけど…高校になってからは、やめました。
いちいち嘘を吐いてないと危ないですから。
…だから、“合コン”が初めてだったのは本当ですけど、高桐先生との出会いも、吐いた嘘も、それが理由です」



あたしはそう言うと、一息ついて、高桐先生を見遣る。

…一見真面目そうな高桐先生は、あたしのこの話をどういうふうに受け止めているんだろうか。

今度こそ幻滅かな。呆れられたかな。

そう思うと、怖くなって…ふと高桐先生から視線を逸らした。



「…、」



しかし。

逸らした、その瞬間。

少しの間黙り込んでいた高桐先生が、ふいに口を開いて…言った。



「…じゃあ」

「?」

「理由を辿っていくと…日向さん、は…寂しかったわけだ?」

「!」