高桐先生はビターが嫌い。


…………


人をまともに上げたのは初めての部屋で、少し緊張してしまう…。

「上がって下さい」と言ったのはいいものの、いざリビングを案内してお互いに向き合って座ると、緊張感が更に増して。

何故かあたしと目をなかなか合わせようとしない高桐先生に、あたしは心を落ち着かせて言う。



「…あの、この話は…誰にも言わないでほしいんですけど、」

「うん、もちろん。誰にも言ったりしない」

「……~っ、」

「………日向さん?」



よくよく考えると…自分の中の苦しみを、「誰かに話す」という行為は初めてだ。本当に説明がしにくい。

そもそも高桐先生は…本当にあたしの話をちゃんと聞いてくれるんだろうか。

申し訳ないけど、まだ出会って間もないからか、なかなかそんな確信も…持てなくて。

何から話そうか…どこまで言おうか…考えるあたしに、やがて高桐先生が言った。



「…もしかして、話しにくい…理由なのかな?」

「え、あ…」

「大丈夫!俺、なるべくなら受け止めるし。…ってか、そういう努力、するし」



高桐先生はそう言うと、この前後藤先生が言っていた通り、別にあたしの嘘に怒っているような様子もなく、その言葉と同時に姿勢を正す。

何だかその雰囲気が、あたしの中の大きな緊張感を少しだけ和らげてくれるようで。

あたしはやがて、ゆっくり話し始めた。



「……あたし、昔からずっと、独りぼっちなんです」

「…え、」

「あたしが本当に幼い頃に母親が亡くなって、父親はまだ生きてるんですけど、仕事ばかりだからほとんど構ってもらえなくて」

「…」

「その上、友達もまともに作れなかったから、ずっと、孤独でしょうがなかったっていうか…」