「…っ、」
…けど。
背けた瞬間。
その一部始終を黙って見ていた、市川が言った。
「…センセ、日向が合コンなんて出るわけないって」
「え、あ…でも、」
「しかもそいつ、アイリじゃなくて“奈央”だし。絶対別人」
そう言うと、めんどくさそうな顔をする。
さっき自分で言ってたじゃん、と。
だけど、そんな市川の言葉に、尚も納得がいってなさそうな高桐先生。
「じゃあ……気のせい?そうなの?」
「…」
それでも沈黙を続けるあたしに、やがて高桐先生は渋々次の生徒の名前を呼んだ。
…た、助かった…。
高桐先生があたしの横を通りすぎたあと。
思わずそう安堵しながら、静かに息を吐く。
まさか、市川のお陰で助かるなんて思わなかったな。
まぁ高桐先生はまだあたしのこと納得がいってなかったみたいだけど、とりあえずは一安心。
思わぬ市川の助けに内心は驚きつつも、しばらくするとようやく高桐先生による名前の確認も終わって、やがて担任の佐藤先生も戻って来た。
「…、」
『ごめんね。それでも俺は…』
『俺は、アイリちゃんが…』
…“あの時”から、この学校で唯一、あたしの秘密を知っている人。
だから……いつもの嫌がらせで、自分から皆にバラしてもおかしくないはずなのに。
ねぇ…市川。

