高桐先生はビターが嫌い。


その突然の言葉に、あたしはビックリして思わず顔を上げる。

い、いやいや…それダメ!マジでやめて!

出来ればそれだけは避けたいし、自己紹介なんかしたらもうモロバレするに決まってる。

かといって、今更教室を抜けてもそれこそ目立っちゃうし、バレる可能性大だ。

それなのに高桐先生は名簿を開くと、教室内を見渡した。……けど。



「えー、先生自己紹介とかやだー」

「その間に佐藤先生戻って来ちゃうよ」

「そうそう、時間かかるー」



ふいにその時、皆が口々にそう言って、自己紹介をするのを否定した。

やっぱり自己紹介をしたくないのはあたしだけじゃなかったみたいで。

皆のその言葉に、高桐先生はそれもそうかと頷くと、皆に言う。



「…じゃあ、自己紹介はやめとこうか。でも皆の名前と顔を一致させたいし、今から先生が一人ずつ名前を言っていくから、呼ばれたら返事して」



そう言って、皆の様子を伺う高桐先生。

そんな先生の言葉に、皆は「それなら」と頷いて、大人しくなる。

けど、一方のあたしは…それでもまだ不安だったけれど。

…で、でも、大丈夫。

名前を呼ばれたら、テキトーに返事をすればいいだけ。

心配するようなことは一切ない。


そう思うと、内心ドキドキしながら……自分の番を待つことにした。



「えー…じゃあ、出席番号一番の芦屋亮くん」

「ハイ」

「…読み方合ってる?」

「ハイ」