高桐先生はビターが嫌い。


…………


「…がさん。日向さん!」

「…?」



そして、保健室で眠りについてから、約二時間後。

暗闇の中で名字を呼ばれて、ゆっくり目を開けると、そこには保健室の先生が居た。



「もうそろそろ二時間よ。日向さんのクラスは、HRが始まるわ」

「!」



あたしはその声に、まだ眠たいながらも…だけどこれ以上は休んでいられなくて、仕方なくゆっくりとベッドから起き上がる。

保健室前の廊下からは他の生徒達の賑やかな声が聞こえてきて、今は休み時間中なんだとやっと把握した。



「…ふあ、眠い…」

「まぁまぁ。今日は午前中で帰れるんだから、あと二時間の辛抱でしょ」

「……ん、そうですね」



先生のその言葉を聞くと、あたしはやっとベッドから降りて、「失礼しました」と保健室を後にする。

まだクラス表を確認できていなかったからわからなかったけど、いざ見てみると、あともう一年は市川と同じクラスで我慢しなければいけないらしい。

…ええ、そんなのってアリ?

それでも、もう決まってしまったものは仕方ないし、とはいえ今の休み時間中に教室に行くと、また何かをされそうな気もする。

あたしはチャイムが鳴るギリギリの時間に教室に入ることを決めて、それまではゆっくりとした足取りで新しい教室に向かった。


………


廊下を歩いていたら、意外と早めにチャイムが鳴って、あたしは急いで教室に入った。

座席は出席番号順だからすぐに見つけられて、だけどまだ眠気を引きずっているなか、自分の席に座る。

担任の先生は、一年と二年で同じ先生だったから、もしかして…と思っていたら、やっぱり今回も同じだった。

………しかし、それは良しとして。



「はい、席についてー」


「…!?」