高桐先生はビターが嫌い。


その声に、顔を上げると。

そこにいたのはやっぱり、市川。

市川は数人の仲間を連れていて、みんな派手めのコ達ばっかりだ。

…香水の匂いがスゴイ。

そう思いながら、その声をシカトしようとすると…



「ねぇ」

「!」

「無視?調子乗んなよクズ」



突然。その声とともに、目の前を市川の足がダン、と遮って。

行く手を阻まれた。

蹴られたロッカーはあたしのじゃないけど…市川のせいで結構凹んでいる。可哀想。

それでもあたしはそいつらに構っている余裕なんてなくて、早く新しいクラス表を確認しに行きたいんだけど。

市川は、何故か許してくれない。

…ほんと、幸せだよね君らは。こっちは春休み中ずっとブルーだったっていうのに。

やがてあたしが市川に目を遣ると、目の前のそいつはその瞬間不気味な笑みを浮かべた…。

…………


「あ、いたたっ」

「はいはい、動かないでね」



そして、その後の保健室。

あれから生徒玄関でなんと暴力を振るわれたあたしは、新学年初日の朝礼時に保健室に来ていた。

…最悪だ。

あたしがいったい何をしたのか、市川がいきなり思い切り殴るから、頬にアザができてしまった。

しかもこういう日に限ってファンデーションをマンションに忘れてきてるし。ほんと最悪。

そう思いながら、黙って先生の手当てに耐えるけれど…たまに薬が染みて痛い。

上からガーゼを当ててもらうと、なんとも情けない姿になってしまった。

……こんなんじゃ今日はデートに行けないじゃん。