高桐先生はビターが嫌い。


…………


後藤先生と一旦別れると、あたしは普通通りに独りで学校に登校して、重たい足取りのまま生徒玄関に入った。

今日から三年だし、クラス替えもあるから、少しはまともな学校生活を送れるといいなぁ。なんて。

とりあえず、今女子達からされている嫌がらせの黒幕である、“市川英里”と同じクラスにならなければそれでいいや。

そう思いながら、自分のロッカーを開けると。



「…っ!」



ただでさえ、あの合コンをきっかけに気分は最悪なのに。

目の前のあたしのロッカーの中には、完全に誰かの故意で入れられたたくさんのゴミがあって。

まぁ…誰かのといっても、犯人はだいたいわかってるけどね。

新学期早々…よっぽど暇なんだね。

あたしは独りそう思いながらため息を吐くと、仕方なく、ロッカーの中のゴミを集めて、近くのゴミ箱に捨てる。

紙くずならまだマシだけど、虫の死骸まであって、思わず顔をしかめた。

……きもちわるい。

こういう時、やっぱりこの嫌がらせを先生に「言いつけてやろうか」と思うけど、

それでもそんなことはなるべくしたくなくて、独り黙々とその中を片付ける。


我慢、我慢。


黒幕の市川は、確かに悪い奴でムカつくけれど…。

プライベートがあたしと全く同じ奴なのは、知ってる…から。


そんなことを思いながら、ようやくロッカーの中を片付け終えた時。

ふいに近くから、そいつの声がした。



「…朝から目障りだねぇ」

「!」