高桐先生はビターが嫌い。

「…、」

「…っ、」



高桐先生がそう言ったその瞬間、また何とも言えない緊張感が走った気がした。

…つ、伝わって…ない?え、伝わんない?

もしかして「そもそも俺たち終わってるよね?」的な?

シンガポールに行った=別れた…みたいな!?え、そうだったっけ!?

あたしがそう考えて静かにパニックになっていると、そのうち高桐先生が言葉を続けた。



「俺と奈央って、元々付き合ってるよね?だって4年前離れる時に“また会えたら一緒にいようね”って…」

「…え?」

「え?」



その言葉に、あたしはふと顔を上げる。

付き合ってるって……え、さっき高桐先生が言った「意味がわからない」ってそういうこと?

「付き合ってないじゃん」とかじゃ、なくて?

あたしが思わず腑抜けた声を出すから、向かいにいる高桐先生がかなり困惑した様子で言った。



「え…アレ!?ちょ、ごめん。俺の勘違いだった!?」

「や、あ…そんなことは、」

「待って待って。俺マジ、会えたら普通に一緒にいられると思ってたよ」



勘違いだったの?恥ず、と。そう言って両手で顔を覆う高桐先生。

その仕草がかわいい。

なんて、思わず顔がニヤけてしまいそうになるけれど、今はそんな場合じゃない。



「か、勘違いじゃないです!」

「!」

「…ごめんなさい。だってさっき先生のマンション行ったら、梨華さんが一緒に居たからビックリしちゃって」

「!…あっ、」

「あたしの方こそ、ずっと勘違いしてたのかなって、思ってました。
…それに、最後に手紙渡してから先生ずっと返事くれないし」



あたしは思い切ってそう言うと、目の前のコップを手に取って、意味なく握る。

ちょっと火傷しそう。だけど甘そうなカフェオレ。

するとそんなあたしの言葉を聞いた高桐先生が、今度はちょっと慌てた様子で言った。



「ご、ごめん!そっか、傍から見たらそう見えるんだ!」

「え、」

「梨華は、俺の2つ上の姉!篠樹の奥さん!」

「え、えぇっ!?」



そうなの!!?

お姉さん!?っていうか後藤先生の奥さんだったの!?何それ!

あたしは予想外の高桐先生の言葉に、思わずビックリして目を見開いた。



「そ、そうなんですか!?って、ていうか本当ですか?お姉さんだとは思いませんでしたけど、」

「いや、あんま似てないってよく言われんだよね。でもそこは安心してほしい。梨華は正真正銘、俺の実の姉だから」

「!」



な、なんだ…よかったぁ。

その言葉に、思わず安堵のため息が出る。

あまりにも仲良さげっていうか、まぁあたしと高桐先生の仲に気を遣っていたから、確かに彼女とか奥さんではなさそうだったけど。