高桐先生はビターが嫌い。

そう言って、今度は照れくさそうに笑う。

その人懐っこい笑顔が懐かしい。

…あ。やばい。あたしの方こそ泣きそうじゃん。

すると、あたしがそう思っていたら、あたし達の様子を見ていた梨華さんが、再び口を開いて言った。



「…あ、あたし、買い物行ってくるね!」

「え、」

「ごめん。ちょっと時間かかるかも」

「!」



そう言ってエプロンを外し、カバンを手に取る梨華さん。

…気を遣ってくれた…?ってことは浮気相手とかじゃないってこと?

でも、明らかに一緒に住んでるみたいな様子だしな…。

やがて梨華さんが部屋を出たあと、あたしは少し気まずそうな顔をしている高桐先生と目が合った…。



******



「俺カフェオレ、ホットで」

「じゃああたしも同じものを」



それからあたし達も結局、あのマンションを後にして、二人で近くの喫茶店に入った。

時刻はいつの間にか夕方になっていて、街が綺麗なオレンジ色に染まっている。

学校帰りの学生たちの姿もチラホラ見える中で、あたしと高桐先生は店内の隅の席で向かい合わせになっていた。



「…っ」



…どうしよう。4年ぶりにやっと再会できたはいいけれど、さすがにちょっと気まずさがある…。

聞きたいことはいっぱいある。手紙の返事のこと、梨華さんのこと、これからのこと…。

…いや、手紙の返事は、異動もあって忙しかったっていうのもあるんだろうけど…。

しかしあたしがそう思っていたら、その時ふいに高桐先生が、その沈黙を破った。



「…な、なんかさ、不思議な感じだよね」

「え、」

「久しぶりの再会でさ、会ってない時間の方が長かったから、お互いが目の前にちゃんといるの、不思議な感じしない?いや、もちろん嬉しいんだけどね」

「…」



でもほんと、大人になったね、と。

笑顔を向けられるから、その笑顔にやっぱりドキ、とさせられる。

気持は変わってない。あたしは今も、先生のことが好きなんだけどな。

あたしはそう思うと、落ち着いた口調で高桐先生に言う。



「…ごめんなさい。4年ぶりの再会になっちゃって。一度も帰って来ないで、連絡と言ったら手紙だけだったし」

「えっあ、そういうのは別に全然っ…」

「正直、寂しかった…ですか?」



あたしが思い切って高桐先生にそう問いかけると、高桐先生は少し黙ったあと、やがて「うん」と素直に頷く。



「…そうだね。正直、毎年とまではいかなくても、どこかで一回くらいは帰ってきてくれると思ってた」

「ごめんなさい」

「でも、逆に何度か俺も…遊びに行こうかな、なんて思ってたんだよ」

「えっ」

「…、」