高桐先生はビターが嫌い。

「っ、ちょ、タンマ!」

「?」

「ちょっと俺に30秒だけちょうだい!」

「!」



何を思ったのか高桐先生はそう言うと、あたしが返事をする間も無くあたしに背を向ける。

するとそんな先生とあたしの様子を交互に見て、梨華さんが呟くように高桐先生に言った。



「…あたし、外出てようか?」

「いやいい!寧ろここ居てほしい!」

「でも、」

「待って。俺今突然のことでなかなか状況を把握出来てない」



高桐先生はそう言うと、独り小さく深呼吸を繰り返す。

その背中を見ながら、あたしは「やっぱりラインくらいしておくべきだったかな」と少し反省する。

でも、夢じゃない。高桐先生がここにいる。

あたしはそう思うと、背中を向けたままの高桐先生に言った。



「あの、突然来ちゃってごめんなさい。先生が住んでるマンション、後藤先生に聞いたんです」

「!」

「今日帰国して、マンションに帰ったら隣の部屋に先生いなくなってて、学校に行ったら女子高に異動になったって言われたから…。
迷惑だったらごめんなさい。(梨華さんもいるし)すぐ帰ります」



あたしはそう言うと、怖いながらも高桐先生の返事を待つ。

でもあわよくば、梨華さんとの関係だけでも知りたい。

この4年間、一応繋がったままでいると思っていたのは私だけ…だったのかな?

会えないからって、他の人と簡単に浮気しちゃうんですか?先生…。

あたしがそう思って高桐先生の言葉を待っていると…やがてようやく高桐先生が再びあたしの方を振り向いた。



「……奈央」

「…?」



そして、あたしの名前を呟くと…



「…夢じゃ、ない…よね?」



確かめるように、ゆっくりとした口調で、あたしにそう言った。



「せっかく会えたのに、夢オチは嫌です」

「!」

「私はずっと先生に会いたかった。先生は、違うんですか…?」



あたしはそう言うと、少しずつ、目の前の高桐先生に近づく。

だけど先生は、あたしからふっと目を逸らしてしまう。

…嬉しく、ないのかな…。

そう思って不安でいると…



「…違うわけ、ないじゃん」

「!」

「これ言うのはダサいけど、正直俺…壊れそうだったんだよ。奈央と離れてから」

「先生…」

「寂しすぎて、毎日全っ然、生きてる感じがしなくてさ。他の生徒皆んなに奈央への気持ちがバレまくってんの。否定すら出来なかった。ずっと会いたくて仕方なかったんだよ」



高桐先生はそこまで言うと、少し泣きそうな様子で、あたしに言葉を続けた。



「でも、ありがと。会いに来てくれて」

「!」

「おかえり、」