高桐先生はビターが嫌い。

「…っ、」



その女性は不思議そうにそう言うと、まじまじとあたしを見つめる。

凄く綺麗で整った顔…。高桐先生と似たような年齢だろうか。

茶色い長い髪が、とっても綺麗なひと…。

あたしが思わず言葉を失っていると、やがてその女性が何かに気が付いたように言った。



「っ…あ!あなたもしかして…!」

「…え?」


******


市川にラインを入れている間、さっきの女性があたしにお茶を淹れてくれる。

女性の名前は「梨華さん」というらしい。

梨華さんはキッチンに立ちながら、リビングに座って待つあたしに言った。



「ごめんなさいね。今陽太出かけてていないの」

「そう…なんですか」

「でもすぐ戻ってくると思うから、ちょっと待ってて」

「…」



梨華さんはそう言うと、なんとまぁ慣れた様子でキッチンからあたしの元にお茶を運んできてくれるから。

その姿に、思わずモヤモヤした。



「あなた陽太の生徒さんよね?女子高だし、たまーに他の子もこうやって来るの。勉強教えて貰いたいって」

「へ、へぇ」

「陽太ったら女子高でもすっごくモテてるんだから~」



梨華さんはそう言うと、悪気のない笑顔でにっこり笑う。

もしかして…高桐先生と梨華さんって…。いや、でも後藤先生は、さっきそんなこと言ってなかったし…。

あたしはそう思うと、ちょっと聞きずらいながらもやがて口を開いて梨華さんに言った。



「あ、あの!」

「うん?あ、良かったらクッキーもあるよ」

「ありがとうございます。…じゃなくて、梨華さんって…」

「え?」

「梨華さんって、高桐…先生の、彼女さん…ですか?」



…聞いてて少し空しくなった。

離れていても、4年間の間、先生とあたしは一応恋人同士だと思い込んでいた。

お互いに、いつか会えることを信じて待っていたのに。

それって全部、あたしだけが思っていたこと…だったのかな…。

しかし、あたしがそう思っていると…



「あ、えっと…」

「…?」

「こ、恋人って、いうか…その、」

「…え」



梨華さんはあたしの問いかけを特に否定することもなく、寧ろ少し照れくさそうな顔をした。

…え。嘘。本当に…?

いや、まさか、実は彼女どころか…



「っ…も、もしかして、奥さ」

「ただいまー」

「!!」