高桐先生はビターが嫌い。

そう言われて、車の窓越しに見た先にあるのは。

あたしがシンガポールに行く前に住んでいた、あのマンションだった。

高桐先生や後藤先生と、隣同士に住んでいた…。




「わ、懐かしいっ…!」

「あたしはほとんど来たことなかったけどねー」

「早く行こ!荷物下ろして、隣の人に挨拶しなきゃ!」



あたしはそう言うと、シートベルトを外してすぐに車から降りる。

その言葉通りにあたしが荷物を下ろしていると、不思議そうに市川が言った。



「?…隣に挨拶って。まぁそれも大事だけど、もっと他に会いたい人がいるでしょうに」

「その会いたい人が、隣に住んでるんだよ!」

「え……誰、」

「まぁいいからいいから」



あたしは市川の言葉にそう言うと、早速市川と一緒にマンションの中へと入っていく。

部屋の位置も、前と同じ部屋番だ。

早く会いたい。

早く会いたい!

先生が手紙を読んでいなければ、あたしを見るなりビックリするはずだし!

……返事をくれないのは、まだ寂しいけど。



「に、荷物重っ…」

「ありがとね、市川。お礼に今日夕飯奢るから」

「約束ね!」

「ん、約束」