高桐先生はビターが嫌い。

そう言って、今度はくるりと。

再びあたしの方に向き直る高桐先生。

その表情は、見えないけれど…先生が、泣いているのはわかっていて…。

そんな先生の言葉にあたしがビックリしていたら、高桐先生が言葉を続けてはっきりと言った。



「“奈央”のことが本当に大事で仕方ないから、悲しませるようなことは出来ない」

「!!」



そう言うと、高桐先生はその瞬間…あたしの腕をぐっと引っ張って。

もう何度目かわからない、その腕の中に。

あたしの体をぎゅっと包み込んだ。



「…行くなよ」

「!」

「お願いだから行かないでよ…奈央」

「…、」



そう言うと、高桐先生はよりぎゅっと…痛いくらいにあたしを抱きしめる。

そんな高桐先生の言葉に、あたしも思わず涙が…溢れてしまって。

お父さんと一緒に暮らせるのは本当に嬉しいけど、でも、あたしだって高桐先生と離れるのは寂しすぎるから。

その背中に、そっと両腕を回す。


…最初に、会った時は…また一緒に夜を過ごす人…

つまり、寂しさを紛らわせてくれる男の人達のうちのほんの一人、くらいにしか思っていなかった高桐先生が。

このマンションでまさかの再会をして、しかも教師だって知って慌てて。

学校内での嫌がらせからあたしをすくってくれて。

市川との仲も今じゃ先生のおかげで良くなって。

あたしの孤独や寂しさに、不器用ながらも真剣に向き合って、諦めないで隣にいてくれる先生のことが、あたしはすっごく…好きだった。