高桐先生はビターが嫌い。


「…先生…?」

「…、」



あきらかにらしくない高桐先生の行動に、あたしは少しビックリしてしまう。

だけどその間にも、あたしの両手首を掴んでベッドに押し付ける…先生の手。

そんな先生に、あたしが首を傾げたら…

表情は見えないけれど、暗闇の中で先生はふっと笑って…言った。



「…本当に無防備だよな?」

「…?」

「俺が教師だからって安心して、ほぼ毎晩部屋に上らせて。今日はお泊り?」

「…、」

「…俺だって、男だよ?奈央、」

「!」



高桐先生が、そう言った…その瞬間。

不意に、突如その言葉とは裏腹に…頬に落ちてきた水滴。

それに気が付いて、あたしが先生の顔を見つめると。

高桐先生が、言葉を続けて…言った。



「っ………のに、ごめん」

「…?」

「やっぱ俺には出来ないや、」

「!」



そう言って、再びあたしの上から体を退かす高桐先生。

この水滴が、高桐先生の涙だと気が付くまで、そう時間はかからなくて。

高桐先生が、あたしに背中を向けてベッドに座ると。

その後ろで体を起こすあたしに、言った。



「…先生?」

「…いきなり、こんなことして…ごめん。でも、寂しいじゃん、実際。どんなにかっこつけても」

「…」

「今はこんなに手が届く距離にいんのにさ、明日にはいないんだよ。何でなんだよっ…」

「…」

「…だから、どうあがいても最後だから、どうせならもう嫌われたくて、俺。だからもう悪魔にでもなれって、思ってたけど…やっぱ無理だ、俺には出来ない」