高桐先生はビターが嫌い。

…………


最後の夜を一緒に過ごすのは、逆に苦痛…というか、寂しさが増すかもしれない。

いつもだったらもう帰っている高桐先生が、いつまでも隣にいて…

一緒にテレビを見て、交代でお風呂に入ったりして、髪を乾かし合って…。

憧れてはいたけど、今までの関係上、どうしても…出来なかったから。


本当はもっとゆっくりしていたいけど、明日は朝、早いから。

今日は早めに寝なきゃいけない。

そう思って、いつもよりはだいぶ早い時間に、お互い寝ることにしたけど…



「一緒に寝よ」

「!」



高桐先生が、意外にもそう言って、誘ってくれて、その言葉にあたしも頷く。

明日にはマンションから出るベッド。

この部屋で使うのは、今日が最後だ…。

狭いシングルベッドだけど、2人で並んで…「おやすみ」とやがて電気を常夜灯まで落とした。


…─────しかし、落とした時だった。



「…奈央」

「!」



…聞き違いか。

一瞬、あたしの下の名前を呼ぶ、高桐先生の声が聞こえてきて。

そうかと思えば。

高桐先生が、また、あたしの名前を再度口にした。



「奈央、」

「!」



…いつもは、「日向さん」としか呼ばない先生…なのに。

どうして、いま、急に…?

だけど初めてそうやって呼んでくれたことも、嬉しく感じて返事をしようと口を開くと…



「っ…!?」

「…、」



周りが薄暗くて、よくわからなかったけれど。

ついさっきまで隣にいた先生が、いつの間にか。

気が付けば、あたしに覆いかぶさるように、上に跨っていた。