高桐先生はビターが嫌い。

そう言われて、そっと受け取った、お父さんからのメモ。

番号は、スマホに登録してあるけれど…でも、「かけてきていいよ」と言ってくれているみたいで、凄く、嬉しすぎて…。

あたしが思わず泣きそうになっていると、それを見た佐藤先生が「良かったな」と微笑む。

でも、寂しくなるな、と。

黙り込む高桐先生の隣で…佐藤先生が、「向こうに行っても頑張れよ」と言ってくれる。

…確かに、少し不安はあるけれど…お父さんと一緒なら…

そう思うと、心の底から安心して。

今までため込んで来た寂しさとか力が、ふっと抜けて軽くなっていくのが明らかにわかるから。

その後、佐藤先生と一言二言…話を終えると。

あたしは、職員室を後にした。


…………



「っ、市川!」



職員室から戻ってきた直後。

教室に入るなり、あたしは真っ先に市川を呼ぶ。

市川は、あたしを待っている間…他の友達と一緒にいたけれど。

あたしが呼ぶと、「遅かったじゃん」と、冗談ぽくそう言って笑う。

その言葉に、「ごめん」と言ったあと。

あたしは、半ば興奮気味に言った。



「さっきの、職員室の話!」

「うん、で、何だったの結局」

「お父さんの話だった!」

「あー…三者面談近いからね。あたしもいろいろ言われてるよ」

「じゃなくて、お父さん、あたしのこと見捨ててなくて!シンガポールに行くことになった!」