高桐先生はビターが嫌い。

…高桐先生はそう言うと、真剣にあたしを見つめるから。

その急な言葉に、少しびっくりしてしまう。

もし…その話が、結果が…あたしにとって嫌な事だったら怖くて。

思わず、耳を塞ぎたくなる。

心はずっと待ってたけど、でも…どこかで、この瞬間を逃げていたのも、もしかしたらあったのかもしれない。

…急すぎる。

そう思いながら、少し、手が震えだして…スカートの裾をぎゅっと握る。

高桐先生の次の言葉を…聞きたくない。

だけど先生は、あたしのそんな様子に気付いているのかいないのか、話を続ける。



「…三者面談の前に、一旦親子二人で進路の話をしてほしいってお願いして」

「…、」

「………あ、日向さんのお父さんは、反省してたよ」

「…え?」

「今まで、日向さんの傍にずっといてあげられなかったこと」



だから、それは安心して、と。

その時、やっと高桐先生が少し微笑んでくれるから。

その言葉を耳にした瞬間に、思わずふっと肩の荷が下りる。



「…そう、なんですか…?」

「うん、」

「よかったぁ…」

「…」



…でも、何故か。

高桐先生のその笑顔が…いつもと少し違うのは、何でだろ…。

そう思っていると…



「でね、ここからが、本当に伝えたかった…本題なんだけど」

「?」

「本当に急で、先生たちも、皆…ビックリしてるんだけど…」

「??」



その時、また。

真剣な顔をした高桐先生と、目が合うから。

一瞬…ほんの一瞬だけ、高桐先生の目が。

あたしには…切なくなったのを、感じた。



「…来月の中旬に、お父さん、シンガポールに赴任することが決まったんだって」

「…え」

「で、出来れば…日向さんも一緒に、連れて行って、2人で暮らしたいって…そうおっしゃってた」