高桐先生はビターが嫌い。

…え、何…え、嘘だろ…バレてる!?

俺は突然の日向さんのその言葉に、一瞬にして頭の中が真っ白になる。

もしかして、実際は部下を使って娘である日向さんの様子をずっとこっそり観察…していた、とか!?

なんて…その一言に対して色んな考えが頭をよぎったけれど、日向さんは再度口を開いて俺に言う。



「まぁ、教師だから仕事として当然なんですけどね」

「!」

「でも、先生が意外にもまだお若いからビックリして疑ってしまいましたけど…いや、疑うのも悪いんですけどね。安心しましたよ。若いのにしっかりしてらっしゃる、」



そう言うと、また、にこやかに笑顔を浮かべるから。

…悪い方ではないんだろうけど。たまに驚かされるな…なんか。

俺がその言葉に内心安心しながら、謙遜するように笑みを返すと…

日向さんが、また口を開いて言った。



「…本当は、わかってるんですよ」

「?」

「奈央には幼い頃から母親がいない。だから、本当なら僕が一番傍にいるべきでした。…いま思えば」

「…、」

「でも、奈央ことは僕の母親…つまり、奈央からすると、祖母にすべて任せていて。だから、“お前なんか父親じゃない”って、怒鳴り散らされましたよ、昔はよく」

「…、」

「だけど今更、奈央とどうやって向き合ってあげればいいのか…ずっとわからないでいたんですけど、でももう、安心して下さい。奈央の進路のことも、父親である僕がなんとかしますから」

「…え」



日向さんはそう言うと、さっき俺が渡したプリントを、俺に返す。

その行動を目にして、完全に?になっている俺。

そして…