高桐先生はビターが嫌い。


あたしはその姿を確認すると、「ほんとだ」とちょっと目を丸くする。

…何で、学校…。

あ…そういえば、この前市川が言ってた「後藤先生の知り合い」って、コウマ君のことだったのかな。

だから学校…知ってるんだ。

あたしがコウマ君を見ながらそう思っていると、その隣で市川が言った。



「行ってきなよ」

「…え」

「コウマ君が待ってるってことは、日向のこと本気なんだよ。やったね!」

「!」



そう言って、「ほら、早く」と。

市川に、軽く背中を押される。

…でも、あたしは別に…逢う気は無いんだけどな。

だけど、そんなあたしの後ろで市川が急かすから。

あたしは一息つくと、やがてコウマ君に近づいた。



「…コウマ君…?」

「!」



あたしがそうやってコウマ君の名前を口にすると、一方のコウマ君はふと顔を上げて…あたしがいる位置の方を振り向く。

コウマ君は暫くスマホを弄っていたみたいだったけど、あたしと目が合うなりそれを制服のポケットに仕舞いこんだ。



「…あ、奈央ちゃん」

「!」

「やっと来た」



コウマ君はそう言ってふんわり笑うと、あたしの方に近づいて来る。

そんなコウマ君に、あたしは…



「…何しに来たの?」



と、疑問をぶつけてみれば、コウマ君は少し笑って言った。



「何しにって、酷いな。せっかく逢いに来たのにー」

「…、」

「逢いにって…」

「え、迷惑だった?」



コウマ君はそう言うと、その整った顔であたしの顔を寂しげに覗き込んでくる。

その距離があまりにも近いから、あたしは思わずこの前のキスのことを思い出してしまった。



「…っ、」