高桐先生はビターが嫌い。


「今日…香水、」



そう言って、真剣に。

その言葉の続きを、口にしようとすると…



「あ、わかった!?」

「…え」

「今日新しい香水買ってきてさ。今までは唯香とお揃いだったんだけど、めっちゃいい香水見つけて。内緒で買っちゃったよ」

「…」

「っつか、速攻で気が付くとか、やっぱお前凄いな!」



気に入ったから、早速つけてんの。

そう言うと、「見た目もかっけーだろ?」と。

俺の前にそのボトルを置く篠樹。

……篠樹じゃ、ない?え、俺の勘違い?

思わぬ篠樹の言葉に言葉を失った俺は、思わず少し…目を泳がせる。


…今日の夜。さっき。

マンションのエレベーターから、突然、日向さんがマンションの外を走って行くから。

どうしたのか、と…慌てて追いかけたら…結局何も…無くて。勘違いで。

だけど、俺には…

“篠樹がいつもつけてる香水の香りがする”って、思ったのに。

男女共用の、甘い香り。

てっきり俺は、その香りに気が付いた瞬間…俺が追いつくまで、日向さんは篠樹と一緒にいたんだと…思っていた。

会いに行ったんだと思った。

なのに今日は…違う香り、なんだ。



「……まぁ、俺の勘違いなら、別に…」

「ん?何?」

「や、何もない」

「?」



…考えすぎ、か。

ちょっと安心した。




しかし…その一方で。日向さんのスマホの中身。



“この画像、バラまかれたくなかったら別れろ”

“許さない許さない許さない許さない”



また新たな問題が…発生しているとは知らずに。