高桐先生はビターが嫌い。

…………


深夜の、静かなリビング。

カタカタと、パソコンのキーボードを打つ音だけが響くそこで、

学校から持ち帰って来た仕事の続きをする。

その途中、ふあ…と欠伸をして伸びをすれば。

不意に、玄関から鍵を開けるような音が聞こえてきて…その音に耳を澄ましたら。

しばらくすると、すたすたとリビングまで篠樹が帰って来た。



「…あれ。お前まだ起きてたん」

「ん。仕事、残ってるから。っつかおかえり」

「ただいま。…明日も休みだから明日やればいいのにー」

「…」



篠樹はそう言うと、一旦キッチンに入り、冷蔵庫を開けて…早速缶ビールを取り出す。

そして、カシ、と開けて…ぐびぐびと飲んだあと。

それを左手に持ちながら、俺がいるダイニングの向かいまで足を運ばせて、言った。



「…なに、数学のプリントか何か?」

「月曜日、小テストしようと思って」

「あー…俺も2年のクラスにそんなこと言っときながら結局やってないわー」

「…」



…おいおい。

篠樹のそんな言葉に俺はそう思いながらも、パソコンのキーボードを打ち続ける。

数学だから…色んな記号があって、毎回ちょっとめんどくさい。

そんなことを思っていると…不意に篠樹が俺の前にブラックコーヒーの缶を置いて、言った。



「ん。やる」

「え、ブラック俺飲めないじゃん」

「や、そうなんだけど、眠そうだから。若干」



そう言って、奢りだから飲め、と。

それを開けさせようとするそいつ。

…まぁ確かに、眠気覚ましには持ってこいだけどさ。

そう思いながら…俺はその缶を開けて、篠樹のビールと乾杯する。

そして、その苦いコーヒーを一口、口にしたあと…



「…あのさ」

「?」



不意に俺は、口を開いて…言った。