高桐先生はビターが嫌い。

だけど、高桐先生は意地悪で。

黙って頭を撫でることしかしてくれない。

何で?さっきはしてくれたのに…。

しかも、そう思って口を膨らませている間に、エレベーターはいつもの最上階まで到着してしまって。

「行くよ」とあたしの前を急いでしまう。

…そうかと思えば。



「ん。着いたよ」

「!」

「また明日ね」



あたしの部屋の前に、すぐに辿り着いて。

すんなりと、見送ろうとしてしまう先生。

…けち。

本当は、昼間のキス…今すぐ忘れたいのに。

忘れさせて、くれない。

だから、



「…もうちょっと一緒に…」

「…」



あたしが、そうやって口を開いたら。

高桐先生が、あたしから目を逸らして…言った。



「…抱きしめて、ってやつ?」

「!」

「今日はもう終わり。ね?」

「…」



…まるで、そう言って…子供に言い聞かせるように、あたしに言うから。

あたしは子供じゃないよ。なんて、思って。

だけど結局はまだ、子供なのか。

思わず、不満げな顔をしてしまう。

目を逸らす。あたしも、高桐先生から。

でも、そんなあたしにチラリと目を遣った高桐先生が…不意にあたしの両肩に手を遣って、下を向きながら…あたしに言った。



「…これ以上は、やめて」

「?」

「さすがに俺も…帰したくなくなる」

「!」



そう言って、あたしと目を合わせようとしない高桐先生を見て、

その言葉の意味を瞬時に理解して、あたしは思わず顔が熱くなる。

…何、それ。急に…ずるい。

だから…本当なら、素直にもうちょっと一緒にいたいけど。

今はまだ、そんなことが…許されないから。これ以上は。

あたしは、その言葉に仕方なく頷いて…「わかりました」と。

高桐先生に、手を振った。



「…おやすみなさい」