高桐先生はビターが嫌い。


「…先生、誰かに見られちゃいますよ」

「んー」

「や、んーじゃなくてね」



でも…まぁいいか。

今はこうしていたいから。

あたしは周りを気にしながらも、何だかんだで…高桐先生の背中に両腕を回す。


……その間、ずっと。

少し遠い場所で鳴っている、カメラのシャッター音には気づかずに。



「…もう合コンとか行かないでね」

「え、心配してくれてたんですか?平気そうだったのに」

「や、めちゃくちゃ心配してたよ」



でも、束縛的なことはしたくないじゃん。

そう言って、よりぎゅっと…あたしを強く抱きしめる高桐先生。

…骨が、あたって痛い。

でも、あたしもその背中から腕を離す気はなれないから。

……欲を言えば、このまま。

キス、してくれたらいいのに。

さっきのこと、全部…忘れさせてくれるみたいに。

だけど…



「…ん、じゃあ帰ろ」

「!」



高桐先生はもう満足したのか、あたしの手を取って…マンションの中へと入って行く。

やっぱりあたしは、高桐先生と一緒にいる方が幸せ。


そう思っている間も…ずっと…鳴り続けるシャッター音。

…まさか、カメラで撮られている…なんて。

知らない。知らない。知るわけない。



「…ん?」

「どした?」

「……や、なんでもないです」

「?」



その時。マンションに入った直後、スマホに二通届いたメッセージ。

一通は、今日知り合ったばかりのコウマ君から。

もう一通は……あたしの、知らない名前。

…だれ…?

そう思いながら、高桐先生と並んで待つエレベーターの前。

こっそり、中を見てみると…


届いていたのは、さっきの画像。

あたしと高桐先生が抱き合っている、画像だった。