高桐先生はビターが嫌い。


あたしはそんなコウマ君にそう思うと、さりげなく彼から離れるべく言った。



「あ…あたし、ちょっとトイレ行くね」

「ん、じゃあついでに俺も電話してくるー」

「!」



そう言うと、ニコニコと。

あたしの隣に立って、自身が着ているパーカーのポケットに両手を突っ込む。

…厄介だな。

そう思っていると。



「あれ、コウマと奈央ちゃんどこ行くの」

「!」



2人で席を立った、その時。

ふいに後ろから、別の男の人の声にそう呼びとめられて。

振り向いたら、見事に皆から視線を浴びていた。

…もちろん、市川からも。



「あ、あたしはトイ、」



だけど、お互いに用事が違うことを言おうと口を開いたら…

その瞬間に、コウマ君がその言葉を遮って。

あたしの手を取って、それをみんなに見せびらかすように言う。



「あ、バレた?ちょっち2人で抜け駆けー」

「!?」

「しようと思ってー」

「や、あっ…」



コウマ君がそう言うと。

「相変わらず手が早ぇな」と笑う、コウマ君の友達。

…その言葉にも、引っかかっていたら…コウマ君に連れられて…あたしはそのまま。



「気が向いたら戻ってくるよー」



そんな勝手な彼と一緒に、半ば強引に部屋を後にした。