高桐先生はビターが嫌い。


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「どうしたの?」

「…え」


つい、ぼーっとしてしまっていたカラオケ店の部屋の中。

ふいに声をかけられて顔を上げると、そこにはついさっき知り合ったばかりの男の人がいた。

…今は、気が付けば約束の合コン中。

その声にやっと我に返ったあたしは、愛想笑いで言葉を返した。



「え、あー…ちょっと疲れちゃってて。ごめんね」

「大丈夫?…寝不足なの?」

「ううん、平気」



あたしはそう言って首を横に振ると、さっき注文したばかりのオレンジジュースを一口、口に含む。

…他の皆は、デュエットをしたり、歌う曲を選んだりしている…。

ダメだな、あたしも皆と一緒に楽しまなきゃ。

あたしがそう思っていると、その男の人…コウマ君が言った。



「奈央ちゃん、だっけ。彼氏いるの?」

「…好きな人はいるよ」

「なんだ、いるのかー」



あたしがそう答えると、コウマ君は「残念だなー」と呟くように言う。

でも、コウマ君だっていそうだけどな…彼女くらい。

だって…イケメン君だしモテそう。

ピアスしてるからか、ちょっとチャラくは見えるけどね。

あたしはそう思うと、コウマ君に言う。



「…コウマ君はいるの?好きな人」

「うん。いなかったけどね、奈央ちゃんのことは可愛いなって思うよ」

「…またまた~。上手だね」



…あたしはそう言うと、コウマ君に向かって冗談ぽく笑う。

やっぱダメだ。この人見た目通りチャラい。