………………
篠樹くんの、隣で。
いつもの夕飯を食べたあと。
あたしは、陽ちゃんにラインした。
「…だれ?」
「陽ちゃん。今日いつ帰ってくるかなぁって聞こうと思って」
「アイツはどーせ今日もどっかで飯食ってきてんだろ」
篠樹くんはそう言うと、仕事が疲れたのかあたしの膝を枕にして横たわる。
そんな彼に、あたしは膝掛けをかけてあげて。
篠樹くんに言った。
「だってさ、今度の水曜日って陽ちゃんの誕生日じゃない?」
「そうだね」
「せっかくだから皆でお祝いしたいじゃん」
「…そうだね」
陽ちゃんにケーキ作ったら喜ぶかなぁ。
なんて、独り言のようにそう言って。
じゃあ、奈央ちゃんも呼んじゃおっか!
とあたしが提案したら、篠樹くんはうとうとしながら「いいんじゃない?」と呟いた。
「…ちょっと。適当に返事してるでしょ」
「そんなことないって」
「うそー」
だけど、あたしがそう言ったその時…
「…あ、陽ちゃんから返事きた」
「何て?」
「……」
「…唯香?」
さっき陽ちゃんに送ったラインの返事がきて、あたしは早速それを開いてみる。
…だけど。
「………つまんない」
「え?何?」
「…何でもない」
「?」
あたしは陽ちゃんのそのクダラナイ文章を読むと、少しだけ低い声で小さくそう呟いて、即座にスマホを閉じた。
陽ちゃんのクセに、正義のフリ?
もしかして彼氏ぶってる?
あんた彼氏じゃなくて教師じゃない。
なのに何で………
『いま日向さんといる』
面白くない。
面白くない。
面白くない。
面白くない。
面白くない。
面白くない。
だけど、あたしが仕掛ける罠はこんなもんじゃないから。
孤独だったあの女を、またすぐに元にもどしてあげる。
「だって、陽ちゃんも篠樹くんも…あたしのものだもん。
…ね?篠樹くん、」
あたしはそう呟きながら独りほくそ笑むと、いつのまにか眠っていた篠樹くんに視線を落とした…。