高桐先生はビターが嫌い。

その時、うつ向かせた顔をまた上げて、高桐先生が言った。



「日向さんだって、この前の土曜日に篠樹と出掛けてたんでしょ。それも二人きりで」

「!」

「俺、その前の日に言ったよね。篠樹には気をつけてって。それなのに無視して普通に行くのは何でなの、」

「それはっ…」



高桐先生に誕生日プレゼントを買いに行ってたからで…。

だけどそれはまだ言えなくて、あたしは言葉を詰まらせる。

するとその間に、高桐先生が言葉を続けて言う。



「それに今朝だってそうじゃん。校門の前で堂々と二人で笑い合ってたりさ。何あれ。あんなの見せられたらこっちだって面白くないよ」

「!」

「…そりゃあはっきり言うけど、唯香とは付き合ってたよ。大学の時にちょっとだけ。でも今は篠樹と唯香が付き合ってるから、確かに辛い時もある、正直。日向さんが言うように」

「…、」

「けど、夕飯のことは日向さんの考えすぎ。そりゃあ考えてみればそう思われたって仕方ない状況だったのかもしれないけどさ」



高桐先生はそこまで言うと、ふいにソファーから立ち上がって…あたしが座っているすぐ隣に移動してくる。

そんな高桐先生にあたしが目を遣っていたら…高桐先生がまた言葉を続けて言った。



「…忘れた?前に俺が、そこの玄関で日向さんに言ったこと」

「…玄関…で?」


「そう。忘れてるならもう一回言ってあげる。


…俺、日向さんのこと心配してるの、“教師として”だけじゃないから。

…“一人の男として”、何とかしてあげたいって思うんだ」


「!」



高桐先生はそう言うと、隣でうつ向くあたしを今度は優しい顔で見遣る。

一方、その言葉を再度聞いたあたしは、忘れてるわけなくて…覚えていたけど、やっぱり何回聞いても嬉しくて。

我慢していた涙が、頬を伝った。