高桐先生はビターが嫌い。

そう思うと…あたしはここ最近の不安とか嫉妬が、心の中に湧いて来て。

高桐先生の事が好きだからこそ、でも先生と生徒という関係だから何もできないことが、悔しくなる。

ここで純粋に笑顔で頷いていたら、可愛いのに。

そんな自分でいたい、のに。

今まではそうやってやってきたのに…何故か、本当に好きな人の前では、それが出来ない。

…だから、あたしは顔を上げて。

泣きそうな目で、高桐先生を見つめたあと…言った。



「…高桐先生は」

「うん?いいよ、お父さんのこと何でも相談に乗るから」

「…」

「…日向さん?」

「………トマト、嫌いなんですね」

「え、」



…高桐先生。

あたしはそう言うと、高桐先生に目を遣ったまま…微動だにしない。

今のあたしは、高桐先生の目にはどんなふうに映っているのかな。

一方の高桐先生は、思いもよらぬあたしの言葉に、きょとんとしていて。



「…トマト?え、どうしたの突然」

「いいから。答えて下さい」



お父さんのことを話し出すと思っていたあたしの予想外すぎるその言葉に、高桐先生は戸惑いながらも…やがて言った。



「…そうだね。あんまり好きじゃないかな。でもそんなことより、」



お父さんのことは、

高桐先生はそう言って、すぐにあたしのお父さんの話に戻そうとするけど…

あたしはそんな先生の言葉を遮って言う。



「この前、このマンションの前であたし…たまたま唯香さんに会ったんです」

「!」