高桐先生はビターが嫌い。

…………


「…平気?」

「え、」



部屋に戻って、高桐先生にソファーに座ってもらって、一息ついたあとに一番最初に言われた言葉が、高桐先生のそれだった。

あたしが高桐先生のその言葉に反応すると、先生が言う。



「…今日話した、お父さんのこと…とかさ」

「…」

「…あ、なわけないか!平気な方が可笑しいよね、ごめん!」



そう言うと、別に大丈夫なのに、高桐先生がそう言って謝ってくる。

確かに、お父さんのことは…不安だけどさ。

寂しい原因の、一人だし。

本当に連絡がなかったらって、考えると…いてもたってもいられないくらい…。

だからあたしは、口を開いて言った。



「…先生」

「うん?」

「ありがとうございます。心配してくれて」

「…、」



あたしがそう言うと、心配そうな顔をしたままの高桐先生と目が合う。

するとその言葉に、あたしと目を合わせたまま話し出す高桐先生。



「…心配だったんだ、ずっと。今日とか特に」

「…」

「日向さんが寂しい時は、俺がいればいいって思ってたけど、でも…それじゃダメな時もあるんだなって…思ったから。今日は」

「…」

「夕飯も断っちゃうくらいだし。でも、独りで抱え込まないで、何かあったら頼ってよ」



日向さんが不安な時は、俺がいつでもすっ飛んでくるよ。

そう言うと、だけど照れくさそうに微笑む高桐先生。


でも、その言葉を聞いた瞬間。

…もしかして、同じこと。

唯香さんにも言ってたりするのかな。

だから、たまに唯香さんから電話がかかってくるのかな。

なんて…そんな可愛くないことを思ってしまう。

嬉しいんだけど…それを言う相手は、あたしだけがいいよ…高桐先生。