高桐先生はビターが嫌い。

…………


昼休みの職員室。

コーヒーの苦い香りが、鼻を掠める。


あたしの目の前には、真剣な顔でこちらを見つめている高桐先生の姿。

…と、隣には少し険しい顔をする担任の佐藤先生。

ああ…今日はなるべく…って、避けていたはずなのに…どうしてこうなっちゃったんだっけ。

確かあれは…市川と教室で雑談をしていたら、そこに高桐先生がやって来て…それで…


そう考えていたら、ふいに職員室内で電話が鳴って、その音にあたしが反応したその直後…

少しの間黙っていた佐藤先生が、あたしに言った。



「…ごめんな、日向。休み中に」

「あ…いえ」

「ちょっと、お前の親御さんの話なんだけどね」

「!」



…お父さんの…?

久しぶりに聞くそのワードに、あたしの耳がピク、と反応する。

出来ればお父さんの話はしたくないんだけど、あたしだってもう高校三年生。

話の内容くらい、想像できる。



「実は…夏休みの前に一度、全員の親御さんを交えて個人で三者面談を予定していてね。まぁまだ先の話ではあるんだけど」

「…」

「だから、日向の親御さんにも是非来てもらいたいんだけど、その前に卒業後のこととかは、親御さんと話したりはしてるのかな?」



佐藤先生は少し聞きづらそうにあたしにそう問いかけると、目の前であたしの返事をじっと待つ。

その隣では、同じくあたしの方に顔を向けたままの高桐先生…

避けていたなかでの、突然のこれは…辛い。

こんなこと思うのも何だけど……お父さんのバカ。

あたしはそう思うと、静かな中でゆっくりと口を開いて…言った。



「…してません」

「…そうだよね。連絡は?」

「最近は…全く」



まぁ…最近どころか、まともな会話なんてそもそもしたことないんだけどね。

とりあえずお金を送りさえすれば平気と思っているような父親だから。多分だけど。