高桐先生はビターが嫌い。

そうなの…!?

あたしはその言葉を聞くと、全くの初耳のその情報に、思わず目を見開く。

え、嘘嘘…だったらあたし、今まで結構出しちゃってたよ!



「そう…なんですか!?え、でも高桐先生、普通に食べてくれてましたよ!美味しいって!」

「まぁ陽ちゃんはそういうこと、気を遣って言わない人だったから。知らないのも仕方ないね。あたしも実際、そんな彼に結構悩まされたし」

「!」



その時。

不意に、不安になる…意味深な言葉を口にした唯香さんと、うす暗い中で目が合う。

…今の、その言い方って…なんか…。

そしてあたしがそう思って不安になっていると…そのうちに唯香さんがまた口を開いて言った。



「でもまぁ、奈央ちゃんは知らなかったんだから。言わない陽ちゃんが悪いのよ」

「けど…あの…」

「うん?どうしたの?」



気になったことを聞いてしまおうか…。

あたしはそう思って、口を開く。



「あ…」



しかし…



「あ、何もうこんな時間。そろそろ篠樹くんのとこ行かなきゃ」



夕飯食べちゃってそう。

唯香さんはそう言うと、あたしに「ごめんね」「じゃあまた」と手を振ろうとして…

だけど。あたしは、このまま不安になったままじゃ嫌だから。

勇気をだして、その背中を呼びとめた。



「ま、待って下さい唯香さん!」

「!」

「あの…最後に一個だけ聞きたいんですけど…もしかして、唯香さんと高桐先生って…その……付き合ってたんですか…?」

「…」



あたしがそう聞いたその瞬間。

背中を向けたままの唯香さんが、その裏で不敵な笑みを浮かべていたことなんて知らずに…

だけど、その笑みをすぐに消すと、あたしに申し訳なさそうな顔をして、言った。



「…ごめんね」