「市川がね。クラスの市川が、高桐先生のこと…好きみたいなの」

「…ああ。それは教師としては嬉しいな、」

「じゃなくて。市川は高桐先生に、恋してるんだよ」



そう言うと、あたしは。

市川の大事な友達のフリをして、高桐に言う。



「…えっ!?」

「市川は、ああ見えて初恋…なんだよね。いつも高桐先生のこと考えて、勉強も手につかないって言ってた」

「…や、あ…でも、それは…」

「高桐先生、自分から市川に確認してみてよ。でもそのかわり、泣かせたりしたら許さないからね!」

「!」



あたしはそう言うと、



「絶対だよ、先生!」



最後にそう付け加えて、やがてその場を後にした。



「………やっべーなぁ…」



そして一方、急にまた独りにされた高桐先生が、突然の思ってもみない展開に頭を抱える。

…ほんとかどうかなんて、そんなの教師の俺から聞くわけにいかない…と思うけど。

困ったな。とりあえず、しばらくは…知らないフリ、してようかな…。

いやまぁ、そもそもそんなの、嘘だとは思うけど…。

高桐先生はそう考えたあと…



「…あれっ。っつかあの2人もう消えてるし!」



さっきまで見ていた後藤先生と日向の姿が見えなくなっていることにやっと気が付いて、また深くため息を吐いた。







…市川。そう簡単には、上手くいかせないからね…。