涙は呆気なく流れる物。

睨み付けたつもりなのに涙がこぼれた。

「広斗はわかんないっ・・・!」

「ちょっ。琴葉・・・?」

「私は忘れられない・・・!」

「ごめん。」

「バカじゃないの!いい加減にしてよ!」

私の怒鳴る声に周りから視線が集まる。

「あれ姫と王子じゃん!」

「お似合いだよねぇ。」

「姫と一緒にいられるとかいいな。」

「広樹は私の・・・」

「あーもう!わかったから。泣きやめって。」

突然大きな声を出した広斗にびっくりして顔を上げる。

「いきなり泣き出されても困るから。行くよ!」

「は・・・?えっ・・・。」

手を引かれて走る。

「意味わかんないからっ。いきなり走んないでよ!」

人気が少ない階段まで来ると手を離される。

「ごめんってば。涙止まったでしょ。」

「・・・」

止まったけど。止まったけどさぁ。

「今日・・・。広斗の家いっていい?」

「ん。勉強教えてよ。」

「OK。」

クシャリと頭を撫でられる。昔から広斗はこうやって撫でてくれる。

「懐かない猫・・・。」

「はい?広斗なんかいった?」

「いーや!」