俺さえ気づいていれば…。

手紙に書いてあったその言葉が

何度も何度も頭の中で

ぐるぐる回った。

プルルルップルルルッ

電話か?誰だろ。

「もしもし。どちら様ですか?」

「もしもし、ごめんな。
突然、電話をかけて。」

その電話は、上司からだった。

「佐藤さん。どうしたんですか?」

「お前が担当していた会社の契約がとれたんだ!」

「ほ、本当ですか!」

「あぁ!その件について
向こうがいろいろと話をしたいそうだから。
明日から、出張してもらいたいんだが…」

「どこにですか?」

「大阪だ。
行けるか?」

「わかりました!」

俺は、契約が決まったことで

頭がいっぱいになり、さっきまで

頭の中をぐるぐるしていた言葉は

すぐに消えた。

読んでいた手紙をテーブルの上に

置いたままにして、出張の準備を始めた。